「うちの子でも成績は上がりますかね……」
お父さんが心配そうに尋ねてきた。
「それは大丈夫です」
「え、そうですか、本当ですか!?」
「はい」
「お恥ずかしい限りですが、1年間●●予備校に行っていたのにこれですから……」
「まあ、集団授業の予備校ならばそういうこともありますから……ね」
「そ、そうなんですか?」
「その●●予備校でも770点→700点の生徒や別の▲▲予備校でも620点→595点などありましたね」
「え、予備校に1年間行ってても下がることもあるのですか?」
「結構いるみたいですね」
「それはどういった理由でそうなるのですか?」
「親御さんたちと浪人する本人は皆が浪人すれば100%成績が上がると信じ込んでいます」
「う……、そ、そうですね……確かに……」
「学力は向上しても、本番は1発勝負ですから“逆の目”が出ることもありますよ」
「……(絶句)」
「結果に関してそれぞれの予備校にはほとんど非はないでしょうね、本人の問題ですね」
「やっぱりそうなんですか……」
結局のところ、その生徒を預かった。
1年後の結果は553点(前年比で+253点)だった。
その生徒は某国立大学に進学していった。
「え、あの子が553点……」
この結果だけをどういうわけか以前通っていた予備校の担当者が知ることになった。
そしてその担当者が驚きの行動に出たのだ。
(続く)